クラブロクラブ

自然な波に乗せられて

喉元過ぎても熱さを忘れず

大学時代の同期の友人の結婚式は午前中に始まるため、地方に住む私は、前日から大学時代の相方とも呼ぶべき友人宅に泊めてもらいました。

 

その友人は、披露宴での余興にも参加すれば、受付も頼まれていて、それに比べれば私なんてのは気楽なもので、特に何をするでもなく出席すればよかったのです。ここ最近の披露宴では、ありがたいことに友人代表スピーチや余興を頼まれることが続いていたので、久しぶりに緊張感のない前日を迎えていました。

 

前日の夜、のんびりと友人宅に向かう道中、その友人から一通のメールが届きました。

「余興でまたコーラ飲んでもらいます。よろしくー。言ってなくてごめんね!」

 彼はその日も仲間と集まって余興の練習をしていたのですが、どうやらそこでまだ連絡してなかったことに気がついたのでしょう。

 

補足いたしますと、昨年の秋口、まさにその友人の結婚式、相手は大学時代の後輩にあたる友人なのですが、新婦には極秘裏に進められたサプライズ結婚式がありました。彼らが結婚したのはもう3年ほど前になるのですが、式を挙げていなかったので大学時代の仲間が集まって行いました。その時に行われた余興のひとつに、コーラの早飲みがあり、私もノミネートされていました。この対決はまた別の共通の友人が結婚した時の余興から始まったようですが、この時が私のデビュー戦となりました。当時のチャンピオンは後輩でしたが、圧倒的な速さで優勝していたそうで、大学当時は身体のわりに大食い早食いが得意だった私に白羽の矢が立ちました。結果はタッチの差で優勝。見事デビュー戦でチャンピオンの座に輝くことができました。特別嬉しかったわけではありませんが、最近弱くなったと先輩にあたる友人がまわりに言いふらかしていたので、まだまだやれるぞ、というところを示すことができた、という気持ちはありました。が、一方でその時の後輩の悔しがり方が激しく、意味もなく申し訳なくなりました。

 

そんなことがあっての今回です。

友人宅に到着し、話を聞くと、どうやら前チャンピオンの後輩はリベンジに燃えているとのことでした。私の分析では前回はタイミングが良くて勝ったに過ぎないので、今回も運任せになるかと考えていたのですが、その話を聞いてしまっては手を抜くわけにもいきません。ちゃんと勝ちに行くことにしました。

競技特性からコンマ何秒の勝負になりますし、勝ちに行くと言ってもできることは限られています。逆に言えば、小技でも十分に効果があるということです。そう考え始めてからすぐにひとつの小技を思いつきました。練習することもできませんので、脳内でシュミレーションをしてみると、コンマ3秒ほどはタイムを短縮できそうな気がしました。

そこで友人に、今回はこういう技を使ってみる、と宣言すると、たいして大きな反応はありませんでしたが、納得の様子でした。それを見て、勝てると確信しました。こういうとき、その友人は誰よりも頼りになります。

 

 

さて、友人の運転で式場に向かう車内で私は、競技のことではなく、その前の盛り上げ方について考える余裕がありました。競技前に一言ずつ意気込みを話すタイミングがあれば、ひと笑いをとれる段取りを思いつきましたが、その一方で、進行を担当する友人とは息が合わないことが多いので、おそらくそれもなしにあっさり進められるだろうとも思っていました。結果、やはりそのチャンスはありませんでしたが、思った通りで残念ではありましたが、がっかりはしませんでした。

 

さて、本番です。

余興全体のウォーミングアップというなんとも失礼な位置づけをされた戦いにノミネートされたのは3名。その日の主役である新郎、気合十分の前チャンピオンの後輩、そして秘策を携えた現チャンピオンの私です。紹介もそこそこに、スタートの合図がありました。あっという間の決着は、前回よりも少し差を広げたでしょうか、それでもコンマ何秒の差で競り勝つことができました。

見事、戦前のプラン通りの会心の試合運びでチャンピオンの座を防衛することができて、充実感を得ることができました。

めでたし、めでたし。

 

と、ここで話が終わるわけではありません。

今回この話を書くことにしたのは、私や相方を育ててくれたと言っても過言ではない先輩である友人によるところが大きいのです。

 

余興のあと、前チャンピオンも含め友人たちが何人か集まり、その勝負の話をしていたところに、その先輩である友人がやってきました。いつものようにうまいタイミングで話に割って入ったかと思えば、私の使った小技を指して見事と言い放つのです。

私は驚き、興奮しました。

その会場で私がその小技を使ったことに気がついたのは、前日に話をした友人夫妻以外にはいないだろうと思っていました。そもそも勝負自体が極めて短い時間である中で、私が使った小技はほんの数秒にも満たない時間でできるものです。これを見抜く人がいようとは思いもよりませんでしたので、ただただ脱帽するしかありませんでした。

 

 

傍から見れば実に他愛もない勝負です。勝ったところで、負けたところで、何がどうというわけでもないのです。ましてや見る側は、そんなに真剣に見る必要などどこにもないし、普通はなんとなく見て、結果がどうだこうだと言ったり、むしろそれにも触れることなく終わるものなのです。そんなくだらないことなんですが、そんなくだらないことを全力でやることの楽しさを私たちに教えてくれた先輩である友人は、やはりそんなくだらないことでもきちんと見ていたのです。

 

こういうことがあるから、私たちはますますその友人に惹かれてしまうのです。