クラブロクラブ

自然な波に乗せられて

プレビュー

しばらく前の話になりますが、とあるイベントの一環として、とある講演会が行われることになり、いろいろあってその講演会の司会進行を任されることになりました。

うまくできるという自信はありませんでしたが、依頼主にはいつもお世話になっていましたし、それ自体に興味もありましたので引き受けることにしました。

気がつかされることもあれば、思いのほかそこそこうまくできた手応えもあったので、簡単にまとめておくのも悪くないと思いここに記します。

 

 

とある作品の作者の講演です。パネラーとしてその作品の制作側の担当の方と、イベントを主催する会社の社長も参加するというものです。主催者についてはおそらく講演会を聞きに来る人たち以上に詳しいという気はしていたのですが、肝心の作品については、その名を耳にしたことはありましたが、実際に触れる機会はありませんでした。まわりから見ると私の得意分野に見えるようなのですが、実はそうでもないというどことなく微妙な関係の分野でありまして、なんとなくちょっと避けているようなところもあったのです。

 

今回の講演はと言いますと、タイトルはわかっているものの内容はよくわからないでいました。というのも、予定では、75分ほどの講演に15分ほどの質疑応答、ラスト30分でサイン会という流れになるだろうということは聞いていましたが、講演会自体は作者が進めていくのでおまかせしてあるとのことだったのです。

前々日にもらった台本はA4用紙に1枚半、その中身もはじめと終わりのあいさつ、あとは注意事項が書かれているだけという、実にシンプルなものでした。

ちなみに私にとっては、ただ単に原稿を読むということが実はとても難しいのです。アナウンサーのスキルの高さと見えない努力を垣間見た気がしました。自分の言葉で話す方がどんなに簡単なことか。しかし、堅い部分は堅く話さなければなりません。それが思いのほか難しいのです。

と、それはさておき、原稿を見返すにつれて、どうしてもその台本は当事者意識に欠ける、というと表現が悪いのですが、そのような感じに受け取れてしまいます。

私はこれまでにも、大なり小なりイベントの進行というのは幾度も経験したことがありましたが、そのほとんどが主催者として企画したものの進行ということで、ある程度全体的に把握できていたのですが、今回の講演会はそうではありません。 司会をする上での心配事というのは、どうやら主催者には想像しえないのかもしれないということがわかりました。つまり、(自省の念も込めてですが、)主催者は外部に進行を依頼する際には、主催者としてのイメージをある程度共有して、司会者の不安要素を念入りにつぶしていくべきだ、(私自身、主催する際には、そこまで考えが至っていなかった)ということです。

今回はこれまでの私をよく知っている人からの依頼だったので、まあそんなこともいろいろひっくりめて信頼して任せてもらっているのだと都合良く解釈することにしました。

 

作者とは講演会直前にしか会えないということで、まともに打ち合わせをする時間もありませんので、自分でできる準備をすることだけに集中しました。

あたりまえですが、講演会の題材となる作品にはすべて目を通しました。講演会に集まるのはその作品のファンがほとんどだと思われますので、作品に対してはかなり好意的に受け取るようなスタンスで接しました。これが功を奏しました。

あまり得意ではない表現もあるのですが、好むスタイルも多用されていまして、良いところに目を向けるうちに引き込まれていく場面や作者の考えを知りたいという事柄が次々に出てきました。それらを書き出し、分類し、精査して、メモを作っておきます。状況に合わせていつでもこれらを引っ張り出せるような準備を整えます。

次いで、講演会全体の流れを意識しながら、雰囲気や内容、メッセージ、時間などの理想的な展開をイメージしておきます。その大枠の中で、時間のズレや反応のパターンなど起こりうる現象や不確定要素を想定します。そして、それぞれに対応したり、思ったように展開していくための策を大まかにではありますが用意しておきました。

 

迎えた当日、講演会の中で起きた現象はほとんどすべて想定していた枠の中に収まるものでした。準備していたおかげで慌てることなく対応できましたし、それによる反応も意図していた方向に持って行くことができ、期待されていた責務は果たせたように思います。

一つ、想定外だったことは、作者の話す内容の濃さと面白さです。参加者はもちろん、進行役であるはずの私も引き込まれっぱなしで、十二分に楽しんでしまいました。

 

 

講演会に限らずいろんなことに当てはまると思いますが、起こりやすい事態はある程度のパターンがいくつかあり、それくらいは慣れれば想定することができるような気がします。そして、それを解消するための準備というものも多少時間をかけ、労力を惜しまなければある程度はできるような気がします。あとは、それを状況に合わせて自分なりに表現するということで、今回はそれなりにできたような気がします。

思いっきり想定外のことが起こった時の対応ができるかというとまったくもって自信がないのですが、少なくともこれらをもう少しずつでいいので、うまく、広くできるようになりたいものです。

 

そして、この講演会の1ヶ月後にも、まったく別の機会に、なぜかまた司会進行をする仕事があるのでした。今度は少しおしゃれにコーディネーターという名称だったのですが、それはまた別の話です。